東京言語文化教育研究会 第21回定例研究会(2008年3月29日)
「音読指導の今日的課題:リメディアルからシャドーイングまで」
|
鈴木政浩(西武文理大学教員)
授業の様子を再現するために、John Lennonの“Stand By Me“でスタート。波乱に富んだJohnの歌と人生は、生徒学生の心をつかむ。音読にはこうしたメッセージのある教材が必要であることを指摘した。
次に、音読に関する内外の研究成果から、現場での音読指導に役立つtipsをクイズ形式のワークショップでいくつか取り上げた。
- 音読の際生じる読み間違いは、生徒学生の不注意によるものと考えがちだが、実は読み間違える単語ほど停留時間が長い(よく見ている)。
- The position- of-irregularity effectを紹介した。これは、不規則な読みの場所がどこにあるかで単語を見てから発音するまでの時間に違いがあるということである。たとえば、chef, pint, blindの3つの単語では、chefのch-は語頭に、pintの-i-が2番目にある。最初に不規則な読みのつづり字があるため、chefはpintよりも発音を声に出すまでにより時間がかかるということである。
- 2. から単語の発音は語頭のつづりで誘発されるということができ、語頭の指導が音読で有効となる場合がある。
- 音読能力と熟達度の間にはある程度の相関が認められる。
- 一部の生徒学生の中には、モデル音声を聞くだけでは音読能力が伸びない、いわゆる自己補正能力の低い人がいる。したがって、音読を生徒学生まかせにせず、個人指導のあり方を見直さねばならない。
- 音読筆写により英語能力が伸びると言われるが、これは、筆写により意図的に音読速度を下げることによるものである。
さらに、CNNのtranscriptと音声を教材に、実際に音読活動に取り組んだ。一語ずつの音読、フレーズごとの音読、文単位の音読に始まり、フレーズを一息で3回音読、英文を一息で3回音読、3分間ひたすら同じテキストを音読するなど、small stepsを積み重ねる音読のプロセスを再現した。こうして音読の速度を上げることにより、一度集中的に音読したテキストは、再度聞きなおしてみるとかなり聞きやすくなることを実際に体験してもらった。音読活動のまとめとして、洋画やCNNのシャドーイングに取り組んでいるが、その様子を編集したビデオを視聴し、音読指導の成果を確認した。録音や録画など、ゴールを明確に示して音読やシャドーイングに取り組むことで集中力や学習動機が継続することを指摘した。
質疑応答ではいくつかの指摘をがあった。特に今回の発表のタイトルと内容について整合性を持たせることが大切ではないか、たとえば「今日的課題」を一言で説明するとどういうことになるのかなど、参加者に一目(聞)瞭然となるよう配慮すべきであるなどである。
資料
|パワーポイント|html|PDF(ノート付)|