第6回(2012年度)JACET関東支部大会(横浜国立大学)2012年6月10日
発表
学習者からみるよい英語授業の要因に関する研究 |
予稿提出段階では、サンプル数が540程度でしたが、その後サンプル数を3倍弱に増やした結果、かなり結果が動きました。発表当日お配りしたハンドアウトへのリンクがページ最後にございます。
すぐれた授業とは何か。戦後授業研究の歴史は、この問いに対する答えを模索する歴史であった。授業個々のすぐれた点を分析する試みは膨大な蓄積を残して来たが、どのような枠組みになるのかは、まだ未整理のままのように思われる。特に英語という教科に関しては、英語嫌いの生徒学生が増大する中で、学習者が英語学習に向き合うようになるためには、すぐれた英語授業とはどのような枠組みを持つものなのかを整理しておくことは意義があるだろう。
本発表では、次の3つの領域からからすぐれた授業のに関するキーワードを抽出し整理した。
キーワード分類をもとに、生徒学生向け質問紙を作成し調査を実施した(6件法アンケート)(対象者数1459名)。その結果、生徒学生にとってのすぐれた英語授業には3つの要因があることがわかった。
第1の因子 | 授業における授業者の見通し・学習者の自立支援・授業者の学習者把握・授業者の学問的専門性に関する項目 | 授業者の英語に関する専門性や、授業者が学習者を把握し、1回の授業もしくは半年通年の授業における見通しを明確に示すことを同じカテゴリーととらえていることから、「授業内指向因子」と命名した。 |
第2の因子 | 自分や仲間の認識と異文化もしくは国際理解・教材選択・授業者の学術的専門性に関する項目 | 自分や仲間を理解し、さらに国際理解や異文化理解を通じ、人間同士がどのようにしたら仲良く交流できるのかに加え、授業者が研究活動に取り組むなどの学術的専門性と教材選択の視点を同じカテゴリーとしてとらえていることから、「授業外指向因子」と命名した。 |
第3の因子 | 多様な学び・授業成立・英語による交流などに関する項目 | 授業成立に関わること、教科書外の教材やプリント、多様な指導方法で学ぶことや英語で考えを伝えたり話したりすることを同じカテゴリーとしてとらえていることから、多様な学び因子と命名した。最終的に採用した質問項目で、分散全体を説明する割合は約57%程度であった。 |
調査結果は、探索的因子分析の後、確証的因子分析を行った。その結果、3つの因子内に含まれる下位項目がかなり多くなったため、3つの因子に関して、下位項目を再度因子分析にかけたところ、それぞれが2因子構造を取ることがわかった。ここから高次因子分析によるモデル検証が妥当と判断した。全体のモデル適合度はあまり良好とは言えなかったため、3つの因子別々に適合度を確認した。その結果、第1因子に関しては良好な適合度、第2因子では若干適合度が落ち、第3因子では良好とは言えず、全体のモデル適合度が良好といえなかったのは、第3因子の適合度の低さが影響していると考えられた。
第3因子に関しては、質問項目設定の問題点が考えられる。
この研究で、学習者にとっての「望ましい英語授業」の枠組みがおぼろげながらに見えて来た。今後、この望ましい英語授業の視点にもとづいた授業構築を進める。これまで行われてきた英語授業が、どのような点で望ましいと言えるのかなど、授業評価や授業研究の視点に今回の結果が活用できるのかどうかを分析する。